アジア人に対する人種差別

 ライターの池田です。今回は留学や海外赴任などで多くの人が経験する人種差別について考えてみましょう。特に新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的感染拡大で、アジア人留学生らが集団暴行や差別にあった例が相次いでいます。中東パレスチナでもNGOスタッフの日本人女性2人が、通りがかりの現地女性達に「コロナ、コロナ」とからかわれた上、掴みかかられたことは、日本の各メディアで報じられました。英ロンドン大学に留学する23歳の中国系シンガポール人の男性が、人種を理由に暴行されて顔面に重傷を負ったことも衝撃的なニュースでした。

 コロナ渦のアジア人に対する暴行や差別は到底受け入れられないものですが、人種差別とは、基本的に肌の色によって人格や知能の優劣を付けられることです。これが集団になるといわゆる仲間外れなどの温床となります。ここで注意しなければならないのは、留学や海外赴任をした全員が人種差別を経験するわけではないことです。これには性別や容姿などが密接に関わっています。

 例えば、アメリカでは、男性は白人>黒人>ヒスパニック>(東・東南)アジア系というヒエラルキーが存在する対し、女性は白人>アジア系>黒人=ヒスパニックであると言われています。これは国ごとに微妙に異なっていて、イギリスでは男性は白人>南アジア系>黒人>(東・東南)アジア系、女性は白人>(東・東南)アジア系>南アジア系>黒人となります(順番はライターの経験主観に基づく)。つまり、私たち東アジア出身者では、男性と女性で白人国家における人種階級が全く異なることになります。したがって、女性の方が人種差別による仲間外れを経験しにくく、特に容姿が優れた女性は白人階級に受け入れられやすくなります。これは人類学でいうところの上昇婚の論理とほぼ同じです。

 日本のように民族的に同質性の高い国に住んでいると、人種差別をするのは野蛮な文化だと思われますが、現実にはほとんどの全ての移民国家で人種差別が問題となっていることを考えると、日本も移民が増えると同様の社会構造になる可能性が高いでしょう。

 では、移民を受け入れないことが正しいのでしょうか。そうではありません。現在移民を積極的に受け入れていない国々では、年功序列が社会構造の基本となっています。つまり、移民国家では主に白人が支配階級であるのに対し、日本などの移民が少ない国では年長者が大きな力を持っています。ただし、年功序列は人種差別とは異なり、下の階級にも開かれている点が特徴です。これは若い人が年を取ることによって、次第に上の階級へと上昇することができることが挙げられます。

 どの国や文化にも差別は存在し、自分が属している集団が社会の上下構造の中に組み込まれています。しかし、人間が素晴らしいのは、そのような中で必ず差別をしない人が存在するからです。日本にも年上だからと言って威張らない人もいれば、留学や赴任先の移民国家でもアジア人を差別しない白人もいます。そのような人に出会ったときはその出会いを大切にし、そういう人たちに仲間と受け入れられるには、自分も普段から差別をしない心がけが求められるでしょう。

執筆:池田 篤史

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