私は2019年の4月からJICA海外協力隊として、ネパールのポカラ市に「行政サービス」という職種で派遣されていました。3月末、ネパールでの生活にも慣れ、2年の任期も折り返しとなって、「よし、ラスト1年頑張ろう!」と意気込んだ矢先に、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大の影響で任期を半分残し緊急帰国しました。現在は、一旦活動を中断し国内で再赴任に備えている状況です。

さて、そんな私の任国ネパールについて多くの人が思い浮かべるのがエヴェレストやヒマラヤ山脈など壮大な山々ではないでしょうか。もちろん山々も素晴らしいのですが、決して広大ではない国土に言語も文化も異なる多くの民族がひしめいていて、国土も世界最高峰のエヴェレスト(8,848m)からインドの国境付近に行けば海抜100m以下のタライ平原が広がり、南北の距離の短い国土の高低差が激しく動植物も多様性に溢れています。そんな旅をするだけでは気づくことができない知られざるネパールの魅力・JICA海外協力隊としての日常をレポートしていきたいと思います。

私が住んでいたポカラ市は、人口約50万人のネパールの第二の都市です。街から標高約7,000メートルのヒマラヤ山脈を望むことができ、一年を通じて比較的温暖な気候もあってネパール随一の観光地として有名です。特に街の中心にあるレイクサイドは、多くの土産物屋やレストランなどが立ち並びリゾート地のような雰囲気があります。そんなポカラには、旅人もあまりの心地よさについつい居座って住み着いてしまう「バックパッカーの沈没地」としての異名もあるみたいです。

レイクサイドなどの観光地があり華やかなイメージがあるポカラですが、私は活動を通じてポカラの貧富の差の激しさを目の当たりにすることになりました。
出稼ぎの人々が住んでいて道路も水道も整備されておらず行政サービスも行き届きにくい地域、またネパールのカースト制度で『ダリット』と呼ばれる不可触民の人々が集められている地域など、文化的の障壁もあり街の発展から取り残されている地域がありました。そして、私は活動を通じてポカラ市の行政サービスが行き届きにくい貧困層、社会的弱者を地域と行政の間に立ちサポートをしていくことになったのでした。

執筆:橋本 良