国際協力の世界で働くには

 国連機関やJICA、NGOなど国際協力の分野で将来働きたいと考えている学生の皆さんは少なくないでしょう。筆者が学生の時に国際協力の道を志した2000年代は、毎年発行されていた国際協力キャリアガイドや山下敏晴さんの『国際協力師になるために』という本などをキャリア形成のお手本にしていました。当時はインターネットの情報はまだまだ限られていました。唯一参考になったのは、国際開発ジャーナル社のWEBサイトぐらいでしたでしょうか。

 しかし、今や時は2020年代。時代は変化し、日本のODA予算も相対的に下がり[1]、中国といった新たな援助国も台頭してきました。国連・世界銀行といった既存の欧米諸国中心の体制に加え、BRICsなど新興国が新たな国際機関を創設し始めています。アフリカでは既存の政府系援助より、民間投資の方が圧倒的にシェアは高くなっています[2]。そのため、国といった枠に囚われず、民間で自由に活動するソーシャルビジネス(社会起業家)の活躍も顕著です。以下、今の時代に相応しいキャリア形成の要件を考えてみました。

キャリア形成に必要な要件とは

  • 実務経験:一般企業などでの職務経験に加え、青年海外協力隊やNGOボランティアなど現場での活動経験が必要です。
  • 修士号:専門性を高めるには、大学院レベルでの研究実績が必要になります。国際機関では博士号(PhD)を求められる場合もあります。
  • 言語:英語以外の言語については別のコラムで紹介していますが、活動する地域によってフランス語、もしくはスペイン語なども必要になってきます[3]。検定資格として英語ではTOEFL、フランス語ではDELF、スペイン語ではDELEが一般的です。

 ただ近い将来、AI技術の発達によって、言語能力自体は人材評価の対象にならなくなる可能性もあるかもしれません。

 上記の3要件を満たすことによって、その人の専門性や専門地域(アジア、アフリカ、中南米など)が明確になってくるはずです。最近の国際協力案件では、GISやドローン、AIなど最新技術を運用するものも増えてきているようです。そのため、エンジニアのようにまでなる必要はないと思いますが、プログラミング言語(特にPython)の基礎知識ぐらいは身につけておいた方が良いかもしれません。と言っても、これからの若い世代は小学校教育からプログラミングを学ぶでしょうから、当たり前のことかもしれませんね。

新たな働き方

 これまでの国連機関やJICA、開発コンサルタントといった働き方から、これからはソーシャルビジネスといった新しい分野も成長しています。『世界を無視しない大人になるために 僕がアフリカで見た「本当の」国際支援』(Kindle版)の著者、原貫太さんはフリーランスの国際協力師として活躍されています。新しい国際協力の働き方が広がり始めています。

執筆:稲川 武


脚注:
1. 外務省「ODA予算」
2. JICA「アフリカの経済成長、持続可能な開発と日本企業の役割」
3. JICA「専門家語学ガイドライン」

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